大会日時:2006年 07月 27日(木曜日) 会場:日本武道館[東京都千代田区]
個人戦 – 小学生の部:優勝 廣田憲亮(6年生)
洗心道場としては初めて、愛知県でも3人目の快挙!!
廣田憲亮君の活躍は新聞・テレビ各社でも取り上げられました。
廣田君の今後の目標は団体戦で日本一になることだそうです。
強い気持ち
廣田君が剣道を始めたのは幼稚園の頃から。「この子があまり積極的な子ではなかったものですから、何か一つ自信を持てることを、と祖母が始めさせました。剣道を始めてすぐに好きになったみたいです。合っていたんですね」と母親の千景さんは振り返る。
指導しているのは、東別院洗心道場の師範長内田信之さん。廣田君を日本一に導いたその指導方法をうかがった。「剣道は、ある程度努力すれば、愛知県チャンピオンくらいにはなれるんです。ただ、日本一になろうと思うと、それだけでは足りない。努力プラス天性のものがないと難しい。それが彼にはある。どうしても教えることができない部分というのがありますから。
例えば、目で見たものを脳で理解して、そこから神経を伝わって指令が行って筋肉が動く――普通の人はこうなんですが――では遅いのです。目で見た瞬間にパッと動く。一流のスポーツ選手はみんなこうだと思います。それを彼は持っている。それをいいカタチで出させてやるのが私のすべきことだと思っています。
もともと選手は誰でもひとりひとりいいところを持っています。それを出させるためには、一度極限状態まで追い込む必要があります。肉体的にも精神的にも追い込んで、追い込んで、追い込まれたところで初めて光るものが出てくる。『うまいね、強いね』なんて言って褒めているばかりでは、その辺の地域では結構強い、というレベル で終わってしまうんです」
負けて「悔しい」という気持ちも人一倍だそうで、自分なりに研究もしてくるという。剣道にかける意気込みが違う、と内田さんは語る。廣田君の剣道にかける強い気持ちが芽生えたのはいつくらいからなのだろうか。
「彼にそういう面が出てきたのは小学校5年生になったくらいのころでしょうか。私がこの道場に来た2年前くらいから練習内容をガラッと変えました。質・量ともに3倍くらいの練習量になっています。面をつけたまま吐いてしまったこともあります。でも、本当に強くなろうと思うのなら、そういう事を乗り越えていかなくてはなりません。
町の子ですから基礎体力がないんです。これでは日本一にはなれない。トーナメント戦で日本一になろうと思うと、一日に10試合以上も勝たなくてはならないからです。それに耐えられる体力と精神力が最低条件です。肉体も精神もその両方を一緒に引き上げないと駄目なのです」
本当の強さ
「剣道というのは、自分より強い人と 試合をしても、たまたま勝ってしまうことがあるんです。しかしそんなのは本当に強いとはいえないですよね。これが2回に1回は勝てるようになり、10回のうち9回は勝てるようになり、そして何回やっても勝てるようになって、初めて本当に強くなったといえるのです。また、自分の調子が悪い時、例えばちょっと風邪気味で熱が出た、そういう時にも、最低でも愛知県チャンピオンにはなれるくらいの力をつけないと全国で勝って行くのは難しいです。私自身小学生の頃から中学、高校、大学、実業団と剣道を続けてきましたから、どれくらいやればどれくらいの強さになれるか、とか、全国まで行くにはどのくらいの力が必要か、ということはだいたいわかります。彼に足りないのは基礎体力でしたから、そこを徹底的に鍛えました」
小学6年生としては、少し小柄な廣田君。同年代のライバル達と比べてひとまわり小さい印象だ。体格の差を克服するため、家から道場までの約5㎞の道のりを走って通っているという。練習も相当厳しいに違いない。
練習はつらいですか?と聞くと廣田君は「はい」と即答した。しかし、同時に「でも楽しい」とも。「いつも怒られてばかりで、やめたいなあと思うこともあります。でも練習すると強くなっていくのがわかるし、試合で勝てるようになるのが楽しい。中学生になっても続けたい。今一番欲しいもの?うーん。背の高くなる薬かな(笑)」
大きな期待
「彼の場合、ずっとスランプなんですよ。肉体と精神のバランスがまだとれていなくて、うまく噛み合わない。団体 戦のキャプテンもやっていますから、自分のことだけでなく、チーム全体のことも考えなくてはいけない。自分の剣だけに集中できない状況でもあります。しかしそれもまた彼の成長につながります。今は肉体だけでなく、精神もグングン成長する時期ですから、色々なことを経験して欲しいと思っています。日本一とはいえ、まだ小学生ですから。『負けたらどうしよう』と思うこともあるでしょうし、まわりの人の『勝って当然』という視線もプレッシャーになるでしょう。それらに耐えての日本一ですから、価値はあると思います。決勝戦はガチガチに緊張してもおかしくない場面でしたが、1分で勝負をつけました。技術面だけでなく、精神面での大きな成長を実感しましたね」
将来はどんな選手になりたいですか?の質問に、少し照れながら「先生みたいになりたい」と答えた廣田君。うれしそうに内田さんが答える。「僕なんか追い越しますよ、この子は。自分が修行した成果を教えるわけですから、それ以上になってもらわないと。先生が10年かかって覚えたことを同じように10年かかって覚えていたのでは進歩がありませんからね」
内田さんの廣田君にかける大きな期待が感じられた。
※ 中川法人会の記事より抜粋 http://www.nakagawa-ho.or.jp/spcial/column/column12.html
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